15年以上前の話、当時わたしは渋谷区東にあった DRAFTというデザイン事務所に勤めており、仕事の合間に頻繁に通ったnanaというお店で、ある時から綺麗な歌声を聞くようになりました。そしてレジ辺りにCDジャケットが置かれているのに気づいて、お店の方にお伺いすると、その綺麗な曲のアルバムとのこと。早速買うことにして、時々仕事をしながらそのCDを聞いていました。
それからしばらくしてnanaはなくなってしまいました。
マネージャーである小山奈々子さんとわたしは、かなり昔からの知り合いだったけれど、最近まで奈々子さんが、羊毛とおはなと関係が深いとは知りませんでした。奈々子さんのことをななちゃんと呼んでいるので、nanaとななちゃんが不思議にリンクして偶然だけど少し縁を感じます。
おはなさんが亡くなったことはいつのころからか知っていました。
おはなさんの歌声はとても優しく若々しかったので、死とは結びつかずなんだか物語のように、空気の塊みたいに受け止めていました。 今回20周年のイベントのひとつとしてわたしが展覧会に関わることになって、また20年分のフワッと大きな空気の塊に包まれるような感覚があります。
たくさんの素晴らしいミュージシャンによりトリビュートアルバムが生まれました。新たな気持ちで羊毛とおはなの曲を聞き、それぞれの詩の一部を絵とともに表現させていただきました。アルファベットにしたのはひと文字ひと文字を読んでやっと意味がわかる、ということに惹かれたからです。
また今回、五感で羊毛とおはなの世界を感じていただけるように
おはなさんを想いながらViscum Flower Studioさんとともにお花の香りも作ってみました。
羊毛とおはなさんと、彼らの歌を好きなあなたに
そしてまだ彼らの歌を聞いたことのないあなたに
ご覧いただけたらと思います。
渡邉良重