『羊毛とおはな』『千葉はな』について
「羊毛とおはな」について私はあまりよく知らない。
私より良く知ってる方が多いと思われる。依頼の為、僭越ながら一筆。
弊社担当は谷口。わりと厄介なアーティストだったと認識している。
とにかくグループ内でいつも意見が分かれすぎて、話にならない報告が多かった記憶がある。
千葉はなは歌はうまいのだが「とくにうたいたいことがない」と云うし、羊毛君はいわゆる世間知らずの「ひねくれモノのあまのじゃく」。一番面倒くさいタイプの人間だと今でも思っている。
結成当初は漠然とした歌詞が多かった。それでは売れないと思った。
空気公団が上限の世界感だ。なんとかしなければ音楽生活が成立しない。
とにかく担当の谷口に「聴く人にちゃんと伝わる二人称に響く主観的な歌詞にしてくれ」と私は口酸っぱく伝えていたことを覚えている。それが鈴木惣一朗さんたちの作業に繋がっていくことになる。
「千葉はな」は圧倒的に歌うたいだった。
彼女には圧倒的な歌唱力と表現力がある。もっと活躍させられた気がして残念でならない。
谷口に「千葉はなは他人の曲を歌わせれば10倍以上売れるのにこの「羊毛とおはな」は失敗なんじゃないのか?」
と云ったこともある。
実際、千葉はなはボーカル仕事でのカバーアルバムの方が「羊毛とおはな」の10倍以上売れていた。
「羊毛とおはな」のファンに聞かせる話でもないがこれは紛れもない事実なのである。
結局、企画された「千葉はな」名義のソロカバーアルバムの約束は直前で果たされなかった。
本人が先に行ってしまったのでなし崩しだ。
羊毛君のソロ「GREEN」は千葉はなのソロを出す約束の元つくられたのにもかかわらず、だ。
まったく都合の良いやつらばかりだな。
はなは優しいし不器用なのだ。今となってはそれでいいのだ。とも思っている。
はなは、あの性格のまんま無邪気に、様々な煩わしいことも気にせず、歌だけを純粋に歌うほうが良いのにな、と思っていた。
それでも『羊毛とおはな』でいい曲を残してくれたからまあいいか。
しかしながら、私はミュージシャン、アーティストというのは本当に良い仕事だなと思う。
作品を音源や映像などで残せている。
先に行ってしまっても、声が聴ける、歌が聴ける。そしてこんなに愛される。
こんなに良い仕事は無いのではないか。と日々思って仕事している。
いつまでもアーティストは人々の心の中で生き続けるのだから。
そしていつもアーティストの傍らに居る立場でなかった私には、今も「千葉はな」が居なくなった実感さえないのだから。
「おい、はな。もうすぐ春だぞ。ライブだぞ。」
LD&K 代表取締役 大谷秀政